短編集『固茹玉子』
目的地へ辿り着く前に下車せざるを得なくなった俺は、駅のベンチに座って風に当たっていた。

「あの……どこかお加減でも?」

子供に声を掛けられた。

「ああ、少し気持ちが悪くてな。でもこうしていれば楽になるさ。有り難うな、お嬢ちゃん」

するとその子は頬を膨らませ、目を吊り上げて腕組みをする。


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