短編集『固茹玉子』
「具合の方は……少し良くなられたみたいですね」

彼女は目を糸のように細くして微笑む。何か心がじんわりと温かくなるようなその笑顔に、俺の心はキリキリと痛んだ。

「私、看護師の卵なんです」

問わず語りに彼女が話す内容に、俺が訝しんで眉を動かすとまた、

「ああ、一旦就職して、看護学校からまたやり直したんですよ。トウが立ってるって言いたいんでしょう」


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