短編集『固茹玉子』
「いや、そんな事は無いよ。偉いと思うよ」

 半ば図星ではあったが、『その歳から思い立つなんて偉い』と思ったのも本当だ。

「私、1度死に掛けてるんです。その時お世話になった看護師さんがとても良くして下さって。私もひとにそんな風に接する事が出来たらと思って……」

ああそうなのか……って、こんな所で油を売っている場合では無い。

「ああ、ちょっといいかな」

俺は彼女の二の句を遮った。


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