短編集『固茹玉子』
そこに居る長男はMP4プレーヤーのイヤフォンを架けて身体を揺らしたまま、長女はV系雑誌の記事に没入したままこちらを見ようともしない。


「ぅおっほん」


俺は咳払いをひとつして、食器棚から急須と茶筒、寿司ネタの漢字で埋め尽くされた飲み口の少し欠けている湯飲みを出すと、茶匙すり切り一杯の茶葉を急須に入れ、ポットのお湯を注いだ。


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