短編集『固茹玉子』
緊急脱出用の退避ポッドまでは、居住区を抜けて尚1ブロック離れている。

この場所で奴に大きなダメージを与え、何とかそこまで辿り着ければ俺の勝ちだ。

ここ厨房を選ばなければならなかったのには訳がある。奴の体液は考えられない程の強酸だ。いつも濡れた状態にあるここでなければ希釈されず、船体に穴が開いてしまう。

そうなったら言わずもがな、船内の酸素は全て放出され、後は冷たい死だけが待っている。

俺は排水口を塞いだうえ、多量の水を流し、半ば床下浸水状態でヤツをここまで誘き寄せたのだ。


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