短編集『固茹玉子』
ヌラヌラとしたヤツの甲殻が、赤い非常灯を照り返す。俺は音を立てないように細心の注意を払いながら、リモコンのボタンに手を架けた。

  キシャァッ グルルル

ヤツは全神経を研ぎ澄ませて、俺の存在を探している。しかしまだだ。もっと来い。

でもヤツは立ち止まったまま辺りを伺うだけ。

キース、ボブ、エイドリアン、リチャード、スティーブ。……みんなヤツに喰われた。俺が彼らに代わって仇を取らなければ、死んだ彼らに顔向け出来ない。


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