短編集『固茹玉子』
  カタッ

俺は鋳物の床を鳴らしてみた。

  カシカシカシカシッ

音に反応したヤツは、その薄気味悪く伸びた四肢を素早く動かして移動する。今ヤツは、この棚の向こうに居て、俺の気配を探っている。

「あばよ」

  ゴォォォォォォオッ

ボタンを押すと火炎放射器からの業火がヤツを火だるまにした。

  グェエエッ ギョェエエッ

炎から逃れようともがくヤツに、消毒用アルコールの瓶を何本も叩き付けた。

  ギョォォォオ グギョォォォオッ

暗い厨房を照らす青白い炎。ヤツはブスブスと音を立てながら燃え落ちていった。


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