短編集『固茹玉子』
ようやく路地裏の物陰に逃げ込んだ俺は、やっとの事でマガジンを装填する。弾丸が7発詰まったそれは後残り1本。1発で相手を確実に仕留めたところで、14人しか倒せない。実に心許ない状況だ。

ポケットの、少し曲がったタバコを咥えて火を点ける。純銀製のジッポーは、独特の香りと共に束の間の休息をもたらした。

箱の中身はこれもまた後1本。赤く灯ったその先端は、ジリジリと燃える俺の心を彷彿とさせる。


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