フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
愛に飢えた子供
フェルキンド王国西部、ボールテックと呼ばれる領地。
王都からは遠く離れたのどかな田舎。しかし整っており、穏やかに時間が流れていた。
側の山から見下ろすと、眼下に領主の城と城下町、豊な田園と美しい湖が見渡せる、良い場所だ。
「何考えてんのよ!? あんたはぁッ!!」
その、領主の城で。
リリアは一人怒鳴っていた。
――沈黙。
「上がったんなら行くぞ。さっきも言ったが時間が無い」
「待ちなさいッ!」
リュシオスの無表情な、事務的な声に、リリアが待ったをかけるが、彼は部屋の出入り口に向かい、
「早くしろ」
彼女が追いかけないので、そこで振り返って待っている。
「すまして言うなぁ!
あんた、自分が何したか分かってんの!?」
冷たいアイスブルーの瞳に、彼女の姿が映る。長い黒髪、黒い瞳。惚れているリュシオスに言わせても、大して美人ではない。
「何か問題があったか?」
「あったわよ!」
彼は……リリアの風呂を覗いたのだ。いや、何憚ることなく見たと言った方が正確か。
先程のこと、彼女は、リュシオスに促されて入浴していた。身体を洗っている最中に、何を考えたか彼はドアを開けたのだ。
「急な用事が入った。今から向かうから急いで上がってくれ」
それだけ言うと、唖然として硬直するリリアを残し、無表情なまま何事も無かったようにドアを閉めた。そして、先程の会話というわけなのである。
述べておくと、この城には女官も侍女も大勢いる。彼女らに頼むなり、そうでなければ脱衣所から声をかけるなり、他にいくらでも手段はあった。
王都からは遠く離れたのどかな田舎。しかし整っており、穏やかに時間が流れていた。
側の山から見下ろすと、眼下に領主の城と城下町、豊な田園と美しい湖が見渡せる、良い場所だ。
「何考えてんのよ!? あんたはぁッ!!」
その、領主の城で。
リリアは一人怒鳴っていた。
――沈黙。
「上がったんなら行くぞ。さっきも言ったが時間が無い」
「待ちなさいッ!」
リュシオスの無表情な、事務的な声に、リリアが待ったをかけるが、彼は部屋の出入り口に向かい、
「早くしろ」
彼女が追いかけないので、そこで振り返って待っている。
「すまして言うなぁ!
あんた、自分が何したか分かってんの!?」
冷たいアイスブルーの瞳に、彼女の姿が映る。長い黒髪、黒い瞳。惚れているリュシオスに言わせても、大して美人ではない。
「何か問題があったか?」
「あったわよ!」
彼は……リリアの風呂を覗いたのだ。いや、何憚ることなく見たと言った方が正確か。
先程のこと、彼女は、リュシオスに促されて入浴していた。身体を洗っている最中に、何を考えたか彼はドアを開けたのだ。
「急な用事が入った。今から向かうから急いで上がってくれ」
それだけ言うと、唖然として硬直するリリアを残し、無表情なまま何事も無かったようにドアを閉めた。そして、先程の会話というわけなのである。
述べておくと、この城には女官も侍女も大勢いる。彼女らに頼むなり、そうでなければ脱衣所から声をかけるなり、他にいくらでも手段はあった。