フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
「風呂に入りなおせ」
「いいわよ。別に」

 城の居室に戻るなりそんな会話を交わすと、リリアはベッドに座った。彼が浴室に入るのを待って、寝間着に着替える。

 横になっていると、明かりが落ちた。リュシオスがベッドに入るところだった。
「……おやすみ」
 言って、あっさりと目を閉じる。王都を出て落ち着いてから、ずっとこうである。彼女を呼ぶことも、抱き締めることもない。

「……ねぇ、リュシー……」
 彼女が声をかけると、彼は目を開けた。

 そっと、包み込むように頬に手を当てると、彼はそれを振り払い、

「いい。必要ない」
 言って、目を閉じ、
「居てくれるだけでいい」
 寝息のような呼吸音を立て始めた。

 ――なんとなく、面白くない。

 彼女はリュシオスに背中を向けて横になっていたが、目が冴えていた。暫くしてベッドを抜け出し、部屋からも抜け出す。

 バルコニーで夜風に当たった。見下ろす湖面に、月の光が映り輝いている。
 静かに時間が過ぎる。だが、いきなり後ろから肩を掴まれた。

< 21 / 66 >

この作品をシェア

pagetop