フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
「……暇」
また、リュシオスの執務室。リリアはただ、彼が書類を処理しているのを見ていた。リュシオスの仕事は政治であるし、手伝おうにも手伝えない。
リュシオスは、彼女の方に羊皮紙と予備の羽根ペンを寄越すと、
「家族に手紙でも書いたらどうだ? この頃書いてないだろう」
顔を上げずに言う。
「よくご存知ですこと」
言って、ペンを取るが、書こうとすると迷う。
王都にいた頃は、手紙を書いていない。リュシオスの落ち込んだ様子など書きたくもなかったからだ。リュシオスが王位継承者だったことも書いてない。ただ、彼女を誘拐した無茶苦茶な貴族らしき男としか知らせていない。
リュシオスの領地がここということは、この前書いた。傲慢さが増したと書けば、今までの経過を知らない家族には、リュシオスは更にわけがわからなくなるだろう。
書くのをやめた。
「……ねぇ」
羽根ペンを置いて、彼の作業を眺めながら、
「そういえば、あたしはもう勉強しなくていいの?」
「あれは忘れろ。もう親父たちの流儀に合わせなくていい」
言いながら、彼は羽根ペンを置いて本棚の方へ行った。
「お前には大したことは求めない。そんなに暇ならこれでも見ていろ」