フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
「あたしに遠慮しないんだったら、好きにすれば? 好きなようにすればいいじゃない。
 襲いたきゃ襲えば?」

 がたん。
 リュシオスが立った。

 立ち上がって、リリアの肩を掴むと、
「いいんだな?」
 彼女を見据え、襟元をはだけさせながら言う。

 見たこともない目。……怒ってるのだろうか? リュシオスのタイが、滑り落ちる。

 リリアは返事をする間もなく床に押し倒された。リュシオスの本が、落ちた。

 唇を唇でふさぎ、上着のボタンを外し、手を中に入れてまさぐってくる。

「ちょ……やめ……」
 リリアがやっと言うと、リュシオスは、手を止め、唇を離し、彼女をただ組み伏せた。

 そのまま、その顔を見つめる。

 リュシオスの目を見て、リリアは戸惑う。

 そして、リリアを解放して立たせると、彼女の服のボタンを留め直し本を拾い、また席に戻って書類に向かい合った。

 何も言わない。

 時間が来るまで、ただ沈黙だけが流れた。彼女の目を見ない。

 ――傷つけちゃった……かな……。
 床に落ちていたリュシオスのタイを、彼女は拾った。

 ――見上げたリュシオスのあの目は……今にも泣き出しそうだった。




◇◆◇◆◇
< 28 / 66 >

この作品をシェア

pagetop