フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
「……言いたい事がよく分からないが……」
 彼女の手を振り解き、一つ一つ確認するように、

「最初からそういうつもりだということが分からなかったか? 普通、その気もないのに女を――しかも嫌がる女を無理矢理同じベッドで寝かせたりしない。
 それから、寝た女はお前だけだ」

 感情のないアイスブルーの瞳で怒りに震える彼女を暫く見てから、
「それより、父さんたちに手紙を書いてくれ。これに添える」
「……え? 国王様に? あたしが?」
「違う。お前の家族だ」

 言いながら、さっきまで書き込んでいた羊皮紙を見せる。立派な紙で、金の箔押し。正式な命令書のようだ。

 リリアは目を通し、顔を引きつらせた。中には、嫁にするから彼女を寄越せと書いてある。

「……あんたねぇ……」
 澄ました顔に指を突き付け、

「礼儀って言葉を知ってる?
 普通、命令書じゃないでしょ! 手紙で、お付き合いしてます結婚させて下さいって言うでしょ! 見下してどうするの?」

 リリアを見つめるアイスブルーの無表情な目。

 ……こいつ分かってない。そう彼女は理解した。

「……いいわよ。もう」
 彼女は、彼の正面から横に回り込み、
「ほら、紙出して。書き方教えてあげるから。
 常識ってもんを考えなさい」

 彼は、素直に手紙用の羊皮紙を出した。

 ……上に立つことばかり強制されて、虚勢ばかり教えられて、知らなかったのだろう。
 確かに子供だった。




◇◆◇◆◇
< 32 / 66 >

この作品をシェア

pagetop