フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~

 リュシオスのスケジュールにも、謁見があった。リリアは、その時ばかりはドレスを着せられ、リュシオスが座る椅子の隣にある、小さめの椅子に座っていた。……この椅子は、長いこと空席だったそうだ。

 何人か謁見者が来た後、最後の名前が読み上げられた。

「よう! 久しぶり!」
 神官らしかった。くだけた調子で入ってくると、リュシオスが席を立って降りていく。振り返って促すので、彼女も続いた。

「ほう、聞いたとおりだな。おめでとう」
 無表情なまま、リュシオスは応対していた。別段、いつもと変わらないようだ。

 リリアに紹介する気がないらしく、一人で話を進めるリュシオス。やがて話は終ったらしい。

 帰るかと思ったら、リリアに近づき、
「本当にあんたに気を許してるな。こいつのこんな緩んだ顔は久しぶりだ。
 こいつ、我侭でしょ~?」

 彼女がその意味を問うより早く、

「ヴァセッタ!」
 リュシオスが慌てて彼女の前に入り、男に怒鳴りつける。

「おう、恐い恐い。
 また来る。今度は紹介してくれよ」

「王都を出る前からの知り合いだ」
 彼の姿が見えなくなってから、リュシオスが言う。
「悪い奴じゃないんだが……見ての通りのお調子者だ。……有能なところも否めないな。
 あいつも必要になる」
「リュシーに?」
 リリアが聞くと、彼は、暫くためらってから、

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