フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~

 剣がうなる。
 城の中庭。リュシオスは、ただ闇雲に剣を振り回していた。訓練とか言っていたが、誰も居ない。

「……あの人、リュシーのこと、リュシオスって呼んでたね。やっぱり、仲のいい人じゃないの?」

「俺をリュシーと呼んでいいのはお前だけだ」
 剣を動かす合間に、リュシオスが言う。
「お前で三人目。後は母さんと姉さん……もういない」

 そういえば、それはリリアには話していなかった。彼から直接、母や姉のことを話したこともない。

「あれ? でも、王都で……」
「あの連中が勝手に呼ぶだけだ」
 剣を水平に動かし、何かを見定めるように左右に振る。
「許可した覚えはない」

 びんっ! 剣が、離れたところにある木に、真直ぐに突き立った。

 無力さ故に母と姉は殺され――同じく無力さ故に彼だけが生かされた。

「リリア」
 しばらくして、リュシオスが言う。視線は、木に突き立った木に固定されたまま。
「お前は……お前こそは守る。だから安心しろ。
 俺はお前を巻き込んだ。だから、この命に代えても責任は果たす」

「ふざけないで!」
 リリアは怒鳴っていた。リュシオスが驚いたように振り返る。

「あたしはリュシーに死んで欲しくない! 命に代えてもなんて言わないで!
 あたしはもう、リュシーがいないと……」
 そこまで言って勢いを失い、彼女は足元を見た。

「リュシーが、あなたがいないと……あなたを失ってまで……」

「……ごめん」
 うろたえて、狼狽して、困っているような声だった。




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