フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~

「レクゼリアとワーテンドルが陥ちた」
 苛立って、言うリュシオス。
「これでオーヴェルトの国力が強化された。名実共に大陸最大の国家になったわけだ」

 彼女の顔を見て、
「大きな国が攻めてくる。多分勝てない」
 内容とは裏腹の、優しい声で言い直す。

「――それで」
 リュシオスは嘆息し、
「俺を、ご機嫌取りに差し出そうという腹だ。連中はな」

 ぽんぽんと、彼女の頭を叩く。

「この前の書簡も、俺を懐柔する為だったんだ。多分、今度来る兄貴で圧力をかけて……俺に人質になることを納得させる。俺が国の為に身を犠牲にすれば、連中は安泰というわけだ」

 疑問という顔で、リュシオスの顔を見上げた。
「……分かんない……」

 呟くと、相変わらず優しく、
「後で詳しく説明する。悪いが、会議の間我慢してくれ」
 そう言って、彼女の額に軽く接吻した。



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