フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~

 つまり。
 勝てない国が攻めてくるから、リュシオスを人質に差し出して、危険を回避しようということ。
 それを理解するだけで、かなりの時間がかかった。

「人質って……」
「都合が悪くなればすぐに切り捨てられるな。連中にすればいい取引だ。元々俺が抜けても王室に損害はない」
 事も無げにリュシオスが言う。

「でも、大事な人じゃないと人質とは……」
「正統直系の王族なら充分だ。オーヴェルトも納得する」

 言いながら、リリアの横に座り、
「大丈夫か? 少し休むか?」
 優しい声。

 ――こんな時に……

「何でそんなに落ち着いてるの?」

「…………さあな。分からない」
 リュシオスは、少し悩んで、
「王族としての教育の賜物かもな。危機はこれが初めてじゃないし」
 無感動に言う。

 ――落ち着き払って……

「それに、受け入れる側は、人質には傀儡にし易いのを歓迎する。……子供とか」
 リュシオスは、肩をすくめた。

「直系の、子供だ」



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