フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
「無論、連中は重要視していないが、人質は強国の道具でもある。喉元にナイフを突き付けるとか、そういう使い方だけじゃない。例えば、人質を都合よく味方にして、傀儡として国を統治させる。
小国の反乱分子を全て潰して、内政が滅茶苦茶になっても、きちんと整備した後に傀儡を使えば問題ない。滅びた国の純正のパーツだ。敗国の不満も逸らせるし、吸収しなくても属領にできる。……吸収すると後が面倒だからな」
リリアの周りを歩きながら、リュシオスが淡々と続ける。マントが、動くたびにはためいた。
「小国側も、そういうリスクを受け入れるから、忠誠が示せるんだ。下手をすれば自分たちを皆殺しにできる手段を渡すわけだからな。
まぁ、親族の情愛を利用するということも、ないことはないんだが……俺のケースには関係ない。オーヴェルトも、俺が冷遇されていることは知っている。だから、忠誠心だな。俺を差し出して、あなた様の国の属国になりますと言うんだ。
無条件降伏や、戦ってからの敗戦よりはマシだ。連中は、もう負けるのを見越しているのさ。その上で、被害を最小に抑えるために俺を使いたいらしい。向こうが滅ぼすつもりなら、どの道皆殺しなのにな。おめでたいことだ」
リュシオスは、できるだけ分かり易い言葉を選び、彼女に優しく言う。