フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
「リュシーは……どうするの?」
「俺は弱い」
 リュシオスは、立ち止まった。

「親父たちが本気になれば、俺を連行するぐらい造作もない。納得していようがいまいが、オーヴェルトに引き渡しさえすればいいからな。
 ……生きていればいい。俺の身柄があればいいんだ」

 つかつかと窓辺に行くと、
「さて、兄貴がどんな条件を持ってくるか……。今人質になれば、幾分権利を保障するというところだろうが……果たしてどの程度か」

 辺りを見回し、
「……ここで生活できるのもあと僅かだな」

 そして、リリアを見据えると、
「例え連中が取引でお前との婚姻を認めても、オーヴェルトが無効と判断すれば同じことだ。俺は、オーヴェルトの都合のいい相手と結婚させられるかもしれん」
「リュシー!」
「大丈夫だ」
 リリアの顔の高さまで自分の顔をもってきて、微笑む。

「お前に操を立てる。仮令この国を滅ぼすことになろうが、この身の破滅を招こうが、お前以外の女は抱かん」

 言って、そっと彼女を包み込んだ。

 リュシオスの兄が、国王の条件ではなく、オーヴェルトが示した人質の身分保障協定を持って来たのは、その翌日だった。



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