フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~


「おやすみなさいませ」

 夜。
 女官が二人とも出て行くと、リュシオスは身体を起こした。

「カーテンはいつも閉めておけ。ただの布切れだが、ないよりマシだ」

 言うと、リリアの服を脱がせ始める。脱いだ衣類を、必要以上に遠くに放る。

「ごめん。我慢してくれ」
 リリアを一糸纏わぬ姿にすると、自分も脱いで、リリアをベッドに引きずり込んだ。

「抱いてる様子を見せないと、薬を盛られる」
「薬……?」
「興奮剤や催淫剤。ひいては麻薬。
 ……大丈夫だ。本当に抱いたりしない」

「でも……何で?」

「今話す。女官は夜しか離れないから、今しか話す時間がない」

 言いながら、ちらりと出入り口を見る。

「オーヴェルトはあの国を滅ぼすつもりだ。かなりの優先順位で。

 オーヴェルトは、最初に俺を傀儡にしようとしたが、向かないと判断したらしい。

 次に、俺に子を設けさせようと考えた。でも、お前に産ませるより、オーヴェルトの身分のある女に産ませた方が都合がいい。
 ……それから見合いの連続だ。どうやら、手が早いと思われたらしいな。十六で結婚だし。

 一ヶ月が過ぎ、二ヵ月が過ぎたとき、徹底した女に出くわした」

 リュシオスは、溜息をついた。ろくに動けない状況だから、彼の声だけが響く。

「まず、酒に溺れさせ、最初は興奮剤だった。次に催淫剤。それでも俺が思い通りにならないものだから、麻薬まで使い始めた。

 そしてあの夜――俺は浴びるように飲まされ、薬を盛られたうえであの女とベッドにいた」

 また溜息をついて、

「その状況で、俺がお前の名前を呟くだけで何もしなかったのが、よほどお気に召さなかったらしい。

 あとは気晴らしの拷問だ。どうやら、俺の利用価値が生命線になったようだな」

 リリアが何も言わないと、軽く口付けて、

「貞操は何とか守った。約束したからな」
< 53 / 66 >

この作品をシェア

pagetop