フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~
「……馬鹿……」
 リリアが、微笑んだ彼の顔に手を当てて言うと、

「ごめん」

 言ってから、入り口を振り返る。
 有無を言わさず、リリアを枕に押し付けるように唇を重ねてきた。
 扉の、小さな音。

 ゆっくりとリリアを放すと、

「大丈夫だ」
 言って、起き上がる。

「今度はお前だ」
「……え?」

「俺のあまりの身持ちの固さに根を上げた。それで、お前なら大丈夫と踏んだ。

 俺がこうしてお前を抱かないと、また薬なりなんなりして……まあ、お前も被害を受けるな」

 と、端正な顔をしかめた。
「俺の子を産まないとなれば、お前は殺される。……最初からこういう事態を考えていたわけだ」

 疲れたように寝転がるリュシオス。

「……唯一の救いは、相手がお前だということか……。

 でも、子供ができたらあの国は滅びる」

「護るの?」
「……どうした?」
 リリアは、彼の胸板に頭を置きながら、

「リュシー、王様たちのこと嫌いでしょ。どうしてそこまでするの?」

「……あの連中のためじゃない」
 リリアの耳を撫でながら、言う。

「あの国の……民のためだ。国が滅びて困るのは、あの連中より国民だからな」

「……変なところだけ王族っぽいんだから。そんなんだから利用されるのよ」

「……ごめん」
「でも、そんなリュシーが好き」
「……リリア」
「何?」
「愛してる」

「うん……ねえ、リュシー」
「どうした?」
 リリアは、リュシオスの上で身を起こして、

「抱いていいよ」
 リュシオスが、息を呑んだ。



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