ショコラ
1.失恋
「別れたいんだ」
「え?」
午後4時、喫茶店『ショコラ』の窓際の席。
いつも待ち合わせる私たちの指定席。
柔らかい茶色の髪、
イケメンと呼ばれてもおかしくない整った顔立ち。
一つ年上の彼、中本 徹(ナカモト トオル)は
席に座って10分もしないうちにそんな言葉を口にした。
「ど……して」
私は息が詰まって、上手く返事を返すことさえできなかった。
指先が震えてくるのが分かる。
会話の間に、ウエイトレスがコーヒーを二つ運んでくた。
「他に、好きな子ができてさ」
彼は、それほど悪びれもせず笑った。
その表情を見て、
私の中で何かが崩れていくのが分かった。
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