ショコラ

 ふらふらと歩いていたら、
いつの間にか喫茶『ショコラ』の前まで歩いていた。

いつもここに立ち寄ってたから、
癖になってたんだろうか。

そう言えば、
あの日ケーキをくれたお兄さんに、
なんだかひどいことをしてしまっただろうか。

あのまま「おいしかった」だけでやめとけば良かったかな。

だけど、本当にあの時は味も何も分からなくて、
かといって「味比べをしてほしい」という言葉に対して
適当な感想をいうのもどうかと思ったのだ。


もう一度、食べさせてもらおうか。
今度はちゃんと注文して。


そう思って店の中をのぞくと、
いつものあの席に徹とあの新しい彼女がいた。


ウソでしょ。
前の彼女とよく来た店に、今の彼女を連れてくるの?
しかも、同じ席にだよ?


徹に気づかれるのが嫌で、
慌てて扉を開けて外に出た。

そうして駆けだそうとした時、
腕を誰かに掴まれた。

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