ショコラ
思わずしゅん、とうつむくと、
お兄さんは立ち止まって頭を撫でた。
「ここでいいかな。寒くない?」
いつの間にか、団地の一角にある公園に来ていた。
遊具では小さな子供たちとお母さんが遊んでいて、楽しそうだった。
その公園の、一番端にあったベンチに、
お兄さんは私を座らせた。
「……彼、うちの店の常連なんだ」
お兄さんが隣に座って、ゆっくりと話始めた。
「相手が何度も変わっても、あいてれば必ずあの席に座るんだ。それで、なんとなく覚えちゃったんだけどね」
「私だけじゃなかったんだ」
彼女が変わっても、みんな同じ喫茶店に連れていくの?
それってなんか、変じゃない?
「で、この間君が泣いてたから、別れ話だったのかなって思ってさ」
「う……。正解、です」
私がショボンとして頷くと、
お兄さんはメガネを直してほほ笑んだ。