ショコラ
「……」
でも思い返せば、私は徹の事、
何も知らないのかも知れない。
私より一つ年上で、経済学部で、……それだけ。
かっこよくて優しくて……って、思ってた。
でもそれは私の主観にすぎない。
だって、ホントに優しかったら、
こんな風に次々に彼女を入れ替えたりするだろうか。
「私が知ってた徹は、何だったんだろ」
もしからしたら私は、
自分の理想を勝手に
徹に当てはめてしまっていたのかな。
彼が持っている、
私にとっての都合の悪い部分は
勝手に見ないようにしてしまっていたのかな。
女子高だからとか言って、高校時代は恋愛を避けて通ってきてしまったけれど、
もっともっと積極的に恋をしてこればよかった。
経験不足な私には、彼の考えが全く分からない。
「でも、今更分かっても仕方ないのか」
もう、振られてるんだもん。
今更分かったって、どうなるもんでもない。
ない……のに。
振られて1ヶ月。
ケーキをくれたマサさんと再会した。
新しい彼女を作った徹と再会した。
そして今だに、失恋から前に踏み出せていない自分を再確認した。