ショコラ

ピピピピ……。


小さな機械音に驚いて顔を上げる。
メールだ。

携帯を見ると、マサさんからメールが届いている。

【明日、ヒマ?】だって。

暇ですよ。暇ですとも。
明日と言わず、明後日もその次も暇ですよ。

……とは書けないので、普通に【暇ですよ】と返信する。

【じゃあ、明日の15時にこの間の公園で待ってる】

すぐに返事が返ってきて、ほんのりと胸が熱くなる。

【わかりました】

と返事をして、携帯をパタンと閉じる。


マサさんは、どうして私を誘ってくれるんだろう。
あ、ケーキの感想を聞きたいからか。
そう言っていたっけ。

でもわざわざ、呼び出してまで食べさせる?

「……よくわかんないや」


前みたいに、期待して裏切られるのは嫌だ。
徹みたいに。

徹は、あの時どうして私を選んだの。
どうして、あんなにあっさりいらなくなったの。

結局私はまだ動けずにいるんだ。
徹の事が忘れられない。
この恋を思い出に出来ない。

こんな風に、何にもならない恋愛なら、しない方がよかったよ。


< 27 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop