ショコラ
「いただきます」
一口サイズをフォークで差して口に入れると、
甘いチョコレートの味が広がった。
「おいしい」
甘い、そしてどこかほろ苦い。
あの日のケーキと一緒。
失恋をした、あの日と。
「……マサさん」
「ん?」
マサさんは、優しい。
どうして私にケーキを御馳走してくれるんだろう。
「とってもおいしいです」
「……和美ちゃん?」
「私、恋なんかしなきゃよかった」
思わずポロリと湧いてくる涙を、どうすることも出来なかった。
マサさんは驚いた様子で、でも、優しく頭を撫でてくれる。