ショコラ


「な、……なんでって」

「君が、見るたびに綺麗になるから」

「……」

「恋愛をしている人は、こんなに変わっていくんだって。
そう思って君の事を見てた。
だから、君が泣いた時、ほおっておけなくなったんだ。
君が、これからどうなって行くのか、心配になって」

「マサさん」

「しなきゃよかった恋愛なんて、どこにもないんだよ」

「……う」


涙が、あふれてきた。
マサさんの言葉が、優しくて。

そうなのかな。
恋をしてよかったのかな。

こんなにこんなに辛くても。
いつかは徹と出会えてよかったって思えるのかな。

肩に乗っているマサさんの手があったかい。
優しい、優しい手。
マサさんが作る、甘いケーキみたいだ。

思う存分泣かせてくれるマサさんに寄りかかって、
私はぼんやり、そんなことを考えていた。

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