ショコラ
「……わかった」
その通りよ。
こんな場所で、
泣き叫べるような、
あなたを叱咤できるような強さは
私にはない。
人目を気にして、黙らざるを得ない。
ある意味であなたは、
私の事をよくわかっている。
なんてずるい男。
「じゃあ、そういうことで。ここは払っとくよ。ゆっくりしていけよな」
優しさ何だかわからないことを言い残して、
彼は席を立った。
目の前の席が空っぽになって、
私は不意に別の世界に来てしまったかのような感覚に襲われる。