ショコラ
詩子さんって、すごい。
たった今会ったばかりなのに、
私の事を見破ったみたいな的確な意見。
そうだ、私はまだ徹に未練があるんだ。
だから動き出すことができずにいる。
優しいマサさんにまた会いたいと思う一方で、どうしても徹の事を考えてしまう。
「すっきり忘れたいんです」
尚もぎゃあぎゃあ言い合っている二人に向かって、私は自分の本心を伝えた。
それは、詩子さんの言葉で気づくことのできた本心だったけど。
二人は一旦顔を見合わせて、マサさんは驚いた顔で、詩子さんはにやりと笑って私の方を見た。
「だったら。こんなとこでくすぶってたって駄目よ。会わなきゃ始まんないでしょ。聞きたいこと聞いたら良いわよ。店に来たら? きっとまた1週間もしたら違う女連れてやってくるわよ」
「お店……は、迷惑かけちゃうので」
「そう言うこと言ってると、聞き分けの良い女になっちゃうわよ」