ショコラ
頭のどこかでは、
分かっていたような気がする。
彼が私に本気になるはずがないと。
どんな言葉も、
目新しい男性経験のない女を落とすだけの
口先だけの言葉にすぎないんだと。
なのに、あの時、『特別』という言葉に、
私はそれらの疑念をすべて頭の隅に押しやってしまった。
そうして残ったのは、彼に捨てられた私。
何も目新しくない、恋に破れたただの女。
「……馬鹿みたい」
情けなさ過ぎて、泣くことさえできない。
有頂天になってたんだ。
初めて男の人から告白されて。
どんな男なのか分かっていてさえ、それに目をつぶった。
「……馬鹿みたい」
同じ独り言をもう一度繰り返す。
ああ、最後に名前を呼ぶことさえできなかったと、
頭の片隅で思った。