ショコラ
「沙紀……」
「だから、和美もあんな奴忘れちゃいなよ」
「沙紀、あのね。今はお姉さんは大丈夫なんでしょ?」
「え? ……ああ、まあね。子供も、もう生まれたし。お義兄さんと仲良くやってるよ」
「だったら、そんなに徹の事責めないであげて」
その瞬間、頬に痛みがはしった。
厳しい表情の沙紀が手を振り上げている。
ああ、沙紀にぶたれたんだ。
「和美の馬鹿!!」
沙紀はそのまま後ろを向いて走って行ってしまった。
私はジンジンと痛む頬を右手で軽くさすった。
まだ、起きた事実に頭がついていっていない。
とにかく整理したくて、『ショコラ』に入るのを諦めて駅に向かって歩き出した。