ショコラ
詩子さんが聞き返す。
ちゃんと聞いていてくれているのが分かって嬉しい。
私は、沙紀が叫ぶように言った、あのお姉さんの話を詩子さんに話した。
詩子さんは、ううんと唸ったり考えたりしてたけど、一通り話し終えるとやっぱりいつものさっぱりした様子で言った。
「そうかも知れないわね」
「え?」
「沙紀ちゃんだっけ? なにせそんなに意地になって彼の事を嫌うってことは裏返しに好きってこともあり得るわよ」
「そう、ですよね」
「でも、和美ちゃんとは関係ないわよ」
「え?」
詩子さんはまっすぐに私を見る。
「彼女の気持ちと、あなたの気持ちは関係ないってことよ。彼女は彼女で自分の気持ちに結論を出して動くしかないわ。それを手伝いたいなら手伝えばいいけど、まずはあなたがすっきりしないとどうにもなんないんじゃないの?」
「詩子さん」
「まだ元彼が好き?」
詩子さんはすごい。
その強い眼差しで、気持ちの奥に隠れている大事なことを見つけ出してくれる。