ショコラ
「徹ときちんと別れたかった」
「は? ちゃんと別れたろ?」
「そうじゃない。私は、ちゃんとできてなかったの」
「和美」
「聞いてて」
私は彼を正面から見つめた。
彼の瞳は、一瞬ぎこちなく宙をさまよった。
逃げないで、ちゃんと見て。
私の気持ち、ちゃんと聞いて。
「徹は私が、初めてつき合った人なの」
「……」
「何もかも初めてで、何もかも嬉しかった。私は、何にも上手く返せなかったのかも知れなかったけど」
だから、本当の『特別』にはなれなかったのかもしれないけど。
「大好きだった」
「和美」
驚いたように見開かれた彼の瞳が、私をまっすぐに見つめる。
それにどこか安心した。
今更だけど、ちゃんと通じ合っているような気がした。