ショコラ
「今までありがとう。……さよなら」
ああ。
言えた。
恥ずかしさとか悔しさとか、ない訳じゃない。
でも、私がしたかった事は徹をなじることじゃない。
自分の気持ちを伝えること。
それが出来て、胸のつかえが下りたような気がした。
これでようやく徹の事を終わりにして、次に進めるような気がする。
「それだけ、言いたかったの」
徹の本当に好きな人とか、問いただそうかと思ったけどやめた。
だってそれは徹の問題で、私がどうこう出来ることじゃない。
沙紀の事も助けてあげたいけど、やっぱり本人が変わらなきゃどうすることも出来ないんだ。
妙に晴れやかな気分になって、私は徹に手を振った。
「ごめんね、時間とらせて。これだけなんだ。じゃあね」
そうして、後ろを向いていくつもりだった。
なのに、一歩踏み出した途端に、徹が私の腕を掴んだ。