ショコラ
それは彼の勝手な言い分だ。
大体、人のせいみたいに言ってるけど、徹がしっかりしてないからどれも長く続かないんじゃないの。
そうは思うものの、鼓動は激しく鳴る。
好きだった人だもの。
今だって、嫌いではない。
そして何より、あれほど私の心をとらえた『特別』と言う言葉が、今になって意味を持つ。
私となら、始められる。
本当に?
本当に?
あの喫茶店で、向かい合わせに座って。
窓の外を眺めるんじゃなくって、本当に湯気の向こうにいる私を見てくれる?
揺れる鼓動。
喉がからからする。
私はどうしたいの。
誰に傍にいてほしいの。
「わ、……私は」
コーヒーの白い湯気。
その向こうで笑っていて欲しい人は。