ショコラ
「……ごめん」
「和美」
「徹とはやり直せないよ」
「だって、俺の事好きだって言ったじゃないか」
「好きだけど」
でも違う。もっと傍にいてほしい人がいる。
優しくて、温かくて、ケーキみたいに甘い。
……マサさん。
私は徹の掴んでいる腕を強く引いた。その拍子に彼が手を離す。
私と彼の間には、1メートルくらいの隙間ができた。
「徹と別れた後、ここまで立ち直らせてくれた人がいるの」
「……」
「今はその人に心が動いてる」
「なんだよ……」
「すっきり徹に言えたから、これで心おきなくその人の事考えられる。だから、徹も」
彼は困った顔をしている。
彼の心をとらえた人は、もう結婚して幸せになっている。
今更どうすることも出来ないんだろう。
それでも。
それでも動き出さなきゃ、人は変われない。
「徹も、頑張ってよ」