ショコラ
「……そう言うのは、本人に言った方がいいんじゃない?」
詩子さんが、まさに今私が考えていたことを言う。
でも、その声音は優しくて、穏やかだった。
詩子さんはゆっくり私の腕を離すと、今度は肩を掴んだ。
自然に背すじが伸ばされて、私の視界はクリアになる。
「何勘違いしてんだか知らないけど。あたしはマサなんか好きじゃないわよ」
「え?」
呆れたような表情で、詩子さんがウィンクをする。
「あたしはね、あんな甘ったるいケーキみたいな男はごめんだわ。
あんまり不甲斐ないからケンカしてたのよ。みすみす和美ちゃんを行かせたなんて言うから」
「そう……なんですか?」
安堵と共に、胸がドキドキしてくる。
「その続きは本人と話した方がいいと思うわ」
詩子さんは優しく私の肩をたたいた。