ショコラ
伝えてもいい?
まだ育ち始めたこの気持ちを。
あなたは、傷ついた私を慰めてくれて、
失恋したとしても恋は無駄じゃなかったと、
そう教えてくれた。
マサさん。
私があなたを好きだと言ったら呆れる?
それでもいいや。
あなたは笑わずに聞いてくれる。
それだけは、信じられるから。
詩子さんから離れて、一歩一歩足を進める。
『ショコラ』の扉をくぐるのに、こんなに緊張した日は無いかも知れない。
「……いらっしゃいませ」
マサさんは、優しい笑顔で私を手招きする。
カウンターの席に、もうすでに温かいコーヒーとチョコレートのケーキが置かれていて。
「待ってたよ」
「マサさん」
マサさんは洗ったコーヒーカップを拭きながら、穏やかな目で私を見る。