ショコラ
「さっき」
「ん?」
「さっき詩子さんと、何してたんですか?」
「え?」
マサさんの顔に焦りが浮かぶ。
気のせいかも知れないけど、顔が赤くなったようにも思える。
詩子さんは違うと言ったけれど、マサさんの方は詩子さんを好きなのかも知れない。
だって彼のこんなに動揺する姿は初めて見るもの。
そう思うと、気持ちを伝えるのはやっぱり怖い。
私は拳を握って、動揺を抑えるようにコーヒーを一口飲んだ。
苦味が口の中に広がって、少しだけ落ち着かせてくれる。
「ちょっとね。叱られてたんだ」
「え? どうして」
「ふがいないって」
マサさんが自嘲気味に笑う。
丁度その時、詩子さんも店の中に戻ってきた。
店内をちらほら見回しながらエプロンを直す。