<改>桜ヶ丘物語
「にしても、昨日のは珍しく粘ったなぁ」

「えぇ」

「また来そうな雰囲気だったし」

「そうですね」

「もう、さ『先生』


続きは聞かなくても分かっていた。


「私は誰とも付き合う気はありません」

どんなに怖い人が来ても、
どんなに言い寄られても、
私は誰のモノにもなりたくない。

これは、あの日からずっと心に誓っていること。

「んー…」

いつもならこれで終わるはずだった。

ちょっと困ったような、それでいて楽しそうな笑みを浮かべて、「そっか」と一言呟いて、そして「なんかあったら俺を頼るんだぞー」なんて間延びした緊張感のない台詞と共に私を開放するのに、なのに、

「もうすぐ夏になる」

何故か今日は違うらしい。


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