グッバイ・マザー
 途中でスーパーに寄り道し、夕飯の材料を買う。白菜、白滝、豆腐、えのき、ネギ。肉はわざわざ精肉店に行き、店で一番高い肉を買った。
「見栄っぱり。」
僕の言葉に敏感に反応する伯母。
「見栄なんか張ってません。」
 レジで会計を済ませ、店を後にする。車内で何度となく、中身を確認してしまった。
「何回も見てる。」
くすくすと笑う伯母。僕はちょっと恥ずかしくなった。

 キッチンに立って、伯母の手伝いをする。ネギや白菜を切る僕を、伯母は横で満足そうに見ている。
「男の子も家事をする時代だもんね。」
「まあね。」
 母の入院が長かったので、家事に関しては大分鍛えられた。
 一緒に買ってきたすき焼きの素を鍋に入れる伯母。
「駄目だよ、肉を焼いてから入れるんだよ。」
「あら、そうなの?」
そうこうしているうちにすき焼きが出来上がった。鍋からは温かい湯気がたっている。
< 19 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop