グッバイ・マザー
 父はゆっくりと重たい口を開いた。
「いいよ。ただ、行くのは明日だろ。今日は家で寝なさい。弥生も心配しているし。」
 姉の顔がちらりと浮かんだ。その顔はもの悲しげに、暗く沈んでいた。
「そうする。学校はもう少し休むよ。連絡しておいて。」
「分かった。皐月、風呂入るか?入るなら沸かしとくぞ。」
父からの嬉しい提案に「入る。」と即答した。
 自宅の風呂は久しぶりだった。僕は部屋に戻り、服を脱いで部屋着に着替えた。洗濯物をバックから取り出し洗濯機に突っ込んだ後は部屋に戻り、ベットに横になる。

 やがて眠気はすぐにやってきた。目を瞑り、母の生まれた場所に思いを廻らすが、すぐに意識は遠のいていった。
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