グッバイ・マザー
 姉が帰って来たらしい。階段を上がる足音で、僕は目を覚ました。足音は僕の部屋の前で止まった。
 「皐月、いるの?」
ドアの向こうから姉の声がした。
「うん。ただいま。」
「おかえり。ご飯食べる?お腹空いたでしょ。」
「うん。」
 ベットから起き上がり、携帯電話を見た。表示は九時を過ぎている。随分寝ていたらしい。ベットから降りて、部屋を出る。冷たい床の感触が、素足に心地良かった。
 既に食卓は調っていた。テーブルの上には僕の好物が並んでいる。唐揚げ、ポテトサラダ、筑前煮。味噌汁は豆腐とワカメ。
 姉はいそいそと茶碗に湯気の立つご飯をよそう。白い肌によく映えるベリーピンクのロングTシャツを着てスキニーデニムを履き、その上からさくらんぼ柄のエプロンを身につけていた。姉は変わらずきれいで、いつでもいいお嫁さんになれそうだと思った。
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