茜なる焔の旗
「これは…まさか、そういうことか?」

 あることに思い至った一孝は、雅のハッチを開く。
「この距離なら、光学望遠鏡で見えるはずだ…」

 シートの脇に置いてあった望遠鏡を取って覗いて見ると、紛うことなく隕石が見える。

「やっぱり…あの隕石はレーダーの超音波を吸収していたんだ」

 カメラの映像はレーダーの観測データで補正されているため、モニターの投影からも隕石の姿が消えたのだ。

 しかし、疑問が解明されたところで状況は何ら好転しない。

 それどころか、むしろ一孝を苦悩させていた。

 重力ハンマーを撃つためには、モニターと連動した照準システムで狙いをつけなくてはならない。

 だが、モニターを通すと隕石が見えなくなってしまう。

「くそ、これじゃ重力ハンマーが使えない」

 雅には固定武装がほとんどない。

 様々な状況で活動できるように、装備を内蔵せず外付けにしてあるのだ。

 数少ない固定武装である重力ハンマーが撃てないとあっては、直接打撃を加えて重力衝撃で破砕するくらいしか手段はない。

 しかし、打撃破砕は岩礁など動かない目標に対してなればこそ有効な方法であって、迫って来る隕石を殴るなど無茶にも程があるというものだ。
 
「かと言って、触れないとなるとやはり撃つしかないし…自動補正を解除して目算でやるか?」
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