茜なる焔の旗
 ホムラの艦砲と同様、雅の装備は目視による直接照準が可能だ。

 センサーが役に立たない現状では、標的を直に見て狙うしかない。

 だが、一孝は目視射撃が苦手なのだ。

「くそ、ホムラと連絡がとれれば曲射砲で遠距離砲撃かける手もあるが…」

 隕石に接近しすぎている雅と違い、ホムラからなら撃墜できる可能性はある。
 と、その時一孝はあることを思いついた。

「…狙わずに撃てればレーダーの補正はかからない?トロンブラストなら、いけるか?」

 トロンブラスト。

 本来はなかった、雅の追加装備。

 強力な電磁波を照射して軸線上の障害物を粉砕する奥の手だ。

 標的照準ではなく範囲設定で攻撃するため、狙いをつける必要はないのだ。

 一孝は直接隕石を見ているので、モニターに映っていなくても進路は見当がつく。

 だが、トロンブラストを撃つなら撃つで決断しなくてはならない。重力圏に近付けば隕石は速度を増す。
 降下状態に入ってしまえば、加速気流でトロンブラストの威力は著しく減殺されてしまう。

 またタイミングが遅ければ、破砕したとしても成層圏で燃え尽きなかった破片が地上に被害をもたらす。

 そして、一孝はある問題に気づく。

「まずいな…今からチャージしてたら阻止限界に間に合わない」


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