茜なる焔の旗
『なんだ、仁志ずっとアレ使ってたのか?あんなもん、ある程度経験積んだら邪魔なだけだせ』

 上空を旋回する偵察ヘリから、3年生田之上和志が割り込む。

『俺も機銃手やってた時初めは使ったけど、勝手に照準ズラされるから外しちまったよ』

 和志はもともと機銃手だったのだが、何年か前に突然ロックが解除された格納庫にあったヘリのパイロットに志願したのだ。

 右舷で機銃座に座っていたころは、図抜けた技量を誇っていた。

『だいたい、シミュレーターとホムラじゃ、補整値が違うんだ。同じ感覚で撃ってたんじゃ、当たるもんか』

 周囲を警戒しながら、和志は続ける。

『自分の目を信じる。それが射撃の基礎だ』

 聞いているのかいないのか、仁志は深くうなだれている。

『射撃訓練終了。雅の整備、終わってるな』

 弘明の声。

 仁志の様子をうかがうこともなく、次の指示をだす。

『監視衛星が、隕石と思われる反応を捉えた。重力ハンマーで撃墜して来い』

< 4 / 15 >

この作品をシェア

pagetop