現実RPG
「魔力を溜めるのに、時間がかかる。今くらいの技だと、1ヶ月は溜めねぇとならねぇ。だから、こんなとこで使いたくなかった。俺の、切り札だ」


「え……」


「だが、仕方がなかった。耳を、澄ませてみろ」


「え?」


よく辺りを音を聞こうとする拓馬。そのときだった。


ガシャ、ガシャ……


遠くの方に、確かに聞こえる。


まだ微かだが、一体や二体の音ではない。奴らが、集まってきている。


「あ……」


「さ、行くぞ。ここにいたら、終わりだ」


「悪ぃ、竜太」


拓馬は竜太の手を貸りながら立ち上がると、二人は再び走り出した。


少しずつ、大きくなる音。


「竜太、来てるぞ!」


「慌てんな、あいつらはまだ、俺たちに気づいてねぇはずだ!」


ひたすら走る二人。


ある程度走っていると、いつの間にか音は消えていた。


「竜太……もう、いいんじゃねぇか?」
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