豪華絢爛/千紫万紅-乱世の花の色-
 信長より、人質である松寿丸を殺せと言う下知を受けた秀吉の前に、半兵衛が躍り出た。
その時の様子が、秀吉の瞼に鮮明に蘇る。

『その件、手前にお任せ下さいませ』

 そう言った半兵衛が出してきた首は、偽物だった様だ。

「まこと、敵わぬな…っ」

 乾いた笑いを浮かべ、顔を押さえた秀吉を見、またも官兵衛は悟った。
自分の息子の恩人は、この世にいないのだと。

「そうで、御座いますな…っ」

 小寺から黒田に、姓を改めた官兵衛は、半兵衛に劣らぬ智謀で秀吉を支えていく。

「官兵衛、これは…」

 秀吉が見上げたそれは、彼も見覚えがあった。

「黒餅紋で御座います」

 官兵衛の陣に立てられている旗に描いてあるのは、何の変哲もない真っ黒い丸。
それは、半兵衛が使用していた紋、である。

「我が盟友に、敬意と感謝の意を表して」


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