豪華絢爛/千紫万紅-乱世の花の色-
「はっはっはっ、主にはそんな気はないであろう?」

「流石は、太閤殿下」

 これは一本取られましたなと、慶次郎はキセルを持っていない手で、額をぱしんっと叩いた。

「まあ良い。お主も楽しんで行け」

「畏まって候」

 慶次郎は、またもわざとらしく頭を下げた。その唇には愉快そうな笑みが浮かんでいる。

 何処か世間を嘲る様な態度の慶次郎を、諸大名方は難しい顔を崩さない。
ただ一人、動じる素振りさえ見せない見せずに、静かに慶次郎の様子を伺っていた男を除いて。
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